【AIレポート第6弾2章】経営は、勝ち方の前提を疑った
この会社は、長い間、いくつもの強みに支えられてきた。
百貨店と卸の棚を取れること。
取引先との長年の関係。
ベテラン営業の調整力。
MDの経験に基づく発注判断。
店舗スタッフの接客力。
ブランドの認知度。
委託販売や別注対応による柔軟なチャネル運営。
財務余力によって多少の非効率を吸収できること。
これらは、確かに強みだった。
しかし、社長は一つずつ問い直した。
百貨店の棚を取れることは、これからも強みであり続けるのか。
取引先との関係は、担当者が変わっても維持できるのか。
ベテラン営業の調整力は、会社の資産として残っているのか。
MDの経験は、若手に引き継げる形になっているのか。
店舗の接客力は、ECや卸の判断に活かされているのか。
ブランドの認知度は、若い顧客にも届いているのか。
委託や卸の在庫リスクを、会社は正確に把握できているのか。
財務余力は、変わらないための余裕になっていないか。
この問いに、すぐに答えられる役員は少なかった。
そこで経営は、戦略テーマを絞った。
一つ目は、チャネルの再定義だった。
百貨店、卸、店舗、EC、委託販売を、それぞれ別々の事業として見るのではなく、顧客接点と在庫の流れとして見直す。
どのチャネルで何が売れ、どこに在庫が残り、どの顧客に届いているのかを、横串で把握する。
二つ目は、商品とブランドの再定義だった。
ブランドごと、事業ごとに異なる商品管理を、経営判断に使える粒度で整理する。
どの商品が利益を作っているのか。
どの商品が在庫を滞留させているのか。
どの商品が若年層に反応しているのか。
どの商品が取引先の棚を維持しているのか。
三つ目は、属人判断の再定義だった。
ベテランの経験を否定するのではない。むしろ、その経験を会社の資産に変える。
営業の提案判断、MDの発注判断、在庫配分、値引き判断、店舗展開の判断を、記録し、検証し、再利用できる状態にする。
四つ目は、意思決定のリズムを変えることだった。
月次で結果を確認するだけでは遅い。
週次、場合によっては日次で、変化を検知し、判断し、実行する必要がある。
経営が決めたのは、AIを導入することではなかった。
どの顧客を取りに行くのか。
どのチャネルを伸ばすのか。
どの商品カテゴリを強化し、どこを縮小するのか。
どの在庫を減らすのか。
どの取引先への提案力を上げるのか。
どの判断を週次化するのか。
どの属人業務を会社の仕組みに変えるのか。
これらを決めることだった。
ここまでは、戦略の話である。
しかし、戦略を実行しようとした瞬間、会社は壁にぶつかった。
3章に続く
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