【AIレポート第6弾1章】危機に気づいた会社は、何から変えたのか
このレポートで描くのは、すでに赤字に転落した会社ではない。
資金繰りに窮している会社でもない。
銀行から返済を迫られている会社でもない。
取引先が一斉に離れている会社でもない。
むしろ、外から見れば安定している会社である。
創業から数十年。
複数のブランドを持ち、卸、百貨店、直営店舗、EC、委託販売、取引先別注など、複数のチャネルを抱えている。
長年の取引先があり、ベテラン営業が関係を維持している。
MDには過去の売れ筋を知る担当者がいる。
店舗には顧客を知るスタッフがいる。
物流や倉庫も日々の出荷を回している。
既存基幹システムも動いている。
売上は大きく崩れていない。
利益もまだ残っている。
財務的にも余力がある。
だから、社内ではこう言われていた。
「うちはまだ大丈夫だ」
しかし、その会社の内側では、いくつもの小さな変化が起きていた。
ベテラン営業やMDの知識は、人に宿ったままだった。
既存基幹は動いているが、経営判断やMD判断には使いにくかった。
店舗、EC、卸、倉庫、取引先のデータは分断されていた。
ブランドや事業ごとに、商品マスタの粒度も、販売データの持ち方も、粗利の見方も違っていた。
百貨店と卸では商習慣が違い、ECでは別のKPIが使われ、店舗では現場の感覚が優先されていた。
会社にはデータがなかったわけではない。
むしろ、データは大量にあった。
しかし、それは会社として使える状態にはなっていなかった。
需要構造は変わっていた。
チャネル構造も変わっていた。
人材構造も変わっていた。
消費者は、以前のように百貨店や店舗だけで商品を選ばなくなった。
取引先は、単なる商品供給ではなく、販売データに基づく提案を求めるようになった。
ECと店舗の境界は薄れ、在庫はチャネル横断で見なければならなくなった。
若手社員は、属人的なエクセル運用に将来性を感じなくなっていた。
ベテランはまだ会社にいるが、その知識はいつ失われてもおかしくなかった。
この会社は、流動性の危機にあるわけではなかった。
収益上の危機にすら、まだ明確には入っていなかった。
それでも、すでに戦略上の危機にあった。
危機には順番がある。
最初に来るのは、戦略上の危機である。
まだ売上は落ちていない。
利益も出ている。
取引先も離れていない。
しかし、これまでの勝ち方を支えていた前提が崩れ始めている。
次に来るのは、収益上の危機である。
売上が落ちる。
粗利率が悪化する。
在庫が積み上がる。
取引先の棚が縮む。
ここで初めて、多くの企業は危機を認識する。
最後に来るのは、流動性の危機である。
キャッシュが回らなくなる。
この段階では、AI READYどころではない。
生き残ること自体が最優先になる。
では、戦略上の危機に気づいた会社は、何をするべきなのか。
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