L-DX株式会社 Chief Product & Solution Officer 二村 毅インタビュー

■アパレル業界背景とIT業界の現状
 
当社L-DXグループでは、アパレル・ライフスタイル産業のさまざまなITや物流改革などの実行やご支援を行ってきました。さまざまな企業をお話しさせていただくなか、どの企業様も、その規模にかかわらず、他業種に比べて複雑な商取引や業務内容にあわせる思想でシステムを作り、さらに他システムと複雑につなぎ合わせて(スパゲティ状態)対応していると感じました。
 
多くのアパレル企業は、システム更新時期が来ると、「あれがないとだめだ」「これがないと困る」といった現場の声に事務局が押され、その結果カスタマイズの要件が肥大化し、費用面や機能面で導入そのものがとん挫したり、スパゲティ状態化しているシステムに合わせるために、不要と思われる追加開発やカスタマイズを行うがために、高額なアップデート費用を使っているなと思っていました。
 
一方、IT業界の現状というと、システムエンジニアの人手不足、さらには人件費急騰で、細かな要求の多い業界は避けれる傾向にあります。事実、大手IT企業数社は、アパレル企業から撤退しております。
 
■IT市場動向
 
多くの業界で、システムはSaaS(Software as a Service)型へ移行が進んでいます。SaaSは、従来のオンプレミス型のシステムに比べて、コスト効率や利便性、スケーラビリティの面で優れており、幅広い業界で採用されています。
 
わたしの知る限り、アパレル・ライフスタイル産業に特化したSaaS型のプロダクトは他にないと思います。また、SaaS型サービスで計画から企画生産管理・在庫管理・購買や販売管理・顧客管理までを1パッケージでカバーしている製品もほぼないと理解しております。
 
IT市場の流れから、パッケージ型からSaaS型に転換しているサービスも多くあるかと思いますが、単純に移し替えれば済むといった簡単な話ではありません。
 
■なぜL-DXをつくったのか
 
今後多くのアパレル・ライフスタイル産業で、人材不足がますます深刻化し人手が足りなくなります。限られた経営資源を膨大なシステム開発費・維持費に向けるよりも、商品開発や品揃え・顧客サービス等、業績を伸ばしてゆくために投資すべきことが、他にたくさんあるはずというのが当社創立時からの課題意識でした。
 
そのために、代表の平山をはじめとして、これまでコンサルティングや実際のアパレル・ライフスタイル産業の経営の中で培ってきたノウハウをふんだんに詰め込んだシステム基盤を、廉価に提供していこうというのがもともとのきっかけです。
 
■提供している製品/サービスの特徴
 
アパレル・ライフスタイル産業向けに、業務基盤となるSaaS型のプロダクトを提供しています。主に、PLMと呼ばれる企画生産分野・基幹システムと呼ばれる在庫管理・購買管理(仕入管理/貿易管理)・販売管理・顧客管理・MD計画システム・予算/予実管理・KPI管理のシステムが含まれたシステムです。さらには、iOSアプリとしての店頭販売システム「L-POS」もあります。一般的な製品区分でいえば、5~7システムが1つにまとまっています。これまでお客様が、システム間のデータ連携で苦労されていたのを見てきたこともあり、商品が生まれてから、販売されるまでの管理を、1つのコードでシームレスにつないでいくことにこだわっています。さらに、各種既存システムとの連携開発や、サブシステムの開発によって、L-DX単体ではカバーできない部分をカバーしていくご支援もしています。
 
アパレル・ライフスタイル産業では、お客様への販売時はもちろんのこと、デザイン会社・仕入先・工場・フォワーダー・物流事業者など社外とのやり取りが多いのが特徴かと思います。こうしたコミュニケーションが、電話・FAX・メール・LINE・Wechatなどで行われていますが、ここのような部分のデータ連携もシームレスにするため、外部の取引業者様も一緒に作業していただけるよう権限を適切に制限したうえで、情報の授受ができる「ゲストユーザー」機能をもっていることも大きな特徴かと思います。
 
そして、何より、アパレル・ライフスタイル産業に従事してきたメンバーが主体となって業務要件を作成しているため、アパレル・ライフスタイル産業特有の商慣行を踏まえた管理や支援機能など、「かゆいところに手が届く」機能、通常のパッケージで実現しようとするとカスタマイズ開発になりかねないような機能も随所に実装されています。加えて、SaaS型なので、法令の改正やトレンド、お客様要望を踏まえての機能強化を当社のコストで行っており、自社開発やパッケージ開発における保守コスト、メンテナンスコストが劇的に下がる可能性があることもL-DXの特徴です。
 
■顧客満足度向上の取り組み

お客様の対応窓口としては、Webからの問い合わせ対応、オンラインマニュアルを整備しています。カスタマーサービスも日々改善をしており、吸い上げたお客様の声を取捨選択し、機能開発にフィードバックする流れを設けています。
 
■今後の展望

L-POSのような使い勝手の良い各種アプリをL-DXの周辺に構築していき、アパレル・ライフスタイル産業のあらゆるニーズに対応していくことを予定しています。

それから、公開APIを整備し、外部の方がL-DXを利用した全く新しいアプリや外部システムとの連携をしやすくしていきたいと考えております。
 
加えて、L-DX本体のユーザーインターフェースの見直しや制度の高い予測ロジックの実装など、やるべきことは多くあると思っています。基盤ができてきたので、進化するプロダクトの強みがこれからどんどん発揮できると思っております。
 
■中長期的なビジョンや目標
 
そもそもの課題意識である、「業界の人材不足」に対して、ロボットやAIを用いてのユーザーインターフェースの機械化、自動化によるアプローチを積極的に進めていくとともに、L-DX利用経験者、習熟した方を増やし、アパレル・ライフスタイル産業におけるマイクロソフトオフィスのような汎用的なサービスの位置づけになれると面白いと思っています。そのために、もっともっとたくさんの仲間を増やして、協創していければいいと考えております。