「2,000社が消える」と予測した2020年のレポート:6年後の答え合わせ

2020年、コロナが日本を直撃したあの春。

私はひとつのレポートを書いた。タイトルは「With & After Corona 時代の進化戦略レポート」。パンデミックがアパレル業界に何をもたらすか、そしてその後をどう生き抜くかを徹底的に分析したものだ。

あれから6年が経った。

今、そのレポートを読み返すと、正直なところ背筋が少し寒くなる。予測したことの多くが、ほぼそのまま現実になっているからだ。


「2,000社が淘汰される」という試算

当時のレポートにはこう書いた。

「1兆円の市場喪失は、約18,000社程度あるアパレルの小売・卸企業にして、2,000社程度の淘汰がある程度のインパクトであると試算される」

2020年時点、アパレル市場は約9.2兆円から7.2?8.0兆円へと急縮小すると予測した。インバウンドの蒸発、テレワーク定着によるスーツ離れ、買い控えの長期化、それらが重なれば、市場の5~10%が「永続的に失われる」と。

結果はどうだったか。

市場縮小は予測通りかそれ以上に進んだ。大手百貨店の衣料品フロアは再編が続き、中堅アパレルの倒産・撤退は後を絶たなかった。融資返済のモラトリアム終了後(2022?2023年)に淘汰が加速するという読みも、実態と大きくずれていない。
 
 
EC化率の予測:「2025年に15~20%」

レポートには、EC化比率について「現状の9%程度から2025年には最低でも15%、場合によっては20%以上になる」とも書いた。

これも当たった。

アパレルのEC化率は2024年に20%を超えるという調査結果が出ている。コロナ前は「ECはまだ補完チャネル」という認識が多かった業界が、たった数年で構造的に変わった。

ただ、ここが本質なのだが、ECが伸びたことで儲かった会社と、ECに乗り遅れて苦しんだ会社に、きれいに分かれてしまった。
 
 
■「低単価×高回転モデルの終焉」

当時のレポートで最も強調したのはここだった。

コロナの制約下において、より一層明確になったのは、一部のリーダー企業以外に元々崩壊しつつあった「低単価で客数を回転させる」というビジネスモデルの弱さである。

人口減少が続く日本で、コロナはその弱さを一気に炙り出した。来店客数が減れば即収益が消える構造。固定費は変わらないのに売上だけが落ちる。ワゴンセール頼みのクリアランスは利益を溶かす。

今もそのモデルから抜け出せていない企業がある。
 
 
6年後も変わらない本質

では何が生き残りの鍵だったのか。レポートに書いた答えは、今読んでも変わらない。

上顧客への集中。 多くの事業は、20%の上顧客で80%の売上を作っている。しかしその20%を本当に「見えている」会社は少なかった。コロナを機に、この見えない顧客を見える化し、そこに労力を集中させた会社が生き残った。

エモ消費への対応。 「モノ」から「コト」、そしてさらに「感情(エモ)」を消費する時代へ。人が何かにお金を払うとき、そこには必ず感情がある。ブランドとは突き詰めると「感情の器」だ。

デジタルとリアルのシームレス化。 オンラインとオフラインを別物として運営している会社は、どちらも中途半端になる。顧客は一人なのに、チャネルが分断されていれば顧客体験も分断される。
 
 
■次の「予言」はAIだ

コロナは、それまで「いつかやらなければ」と先送りにしてきた課題を、一気に「今すぐやらなければ」に変えた。

今、同じことがAIで起きている。

「いつかAIを導入しよう」という会社と、「今すぐAIを経営の中心に据える」会社の差は、2?3年後に決定的なものになる。コロナがECで見せた構造変化を、AIは組織そのもので引き起こす。

2020年に書いたレポートの問いは、2026年の今もそのまま生きている。

「ならでは」の価値を提供し、強靭で効率的なビジネスモデルを構築できなければ未来はない。一方でWITH&AFTER コロナ時代の勝者には莫大な残存者利益が待っている。

コロナをAIに置き換えても、この文章は一字も変わらない。
 
 
まとめ:6年前の問いに、今も答えられているか

・上顧客の20%を、名前と顔で把握できているか
・「低単価×大量回転」への依存から、本当に脱却できているか
・ECとリアルが、顧客体験として一本につながっているか
・自社の「ならでは」の価値を、言語化できているか

コロナで問われたことは、AIの時代になっても問われ続ける。乱世においては、本質から目を逸らした企業から先に消えていく。

このnoteは、L-DX代表・平山真也が2020年に発行した「With & After Corona 時代の進化戦略レポート」をもとに、2026年の視点で再考したものです。

With & After Corona 時代の進化戦略レポート

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